東大狂言研 徒然仏師

一期は夢よ、ただ狂え。

オンライン稽古のこと

東大狂言研ブログ、新設後はじめの日記的記録です。

 

新型コロナウイルス感染拡大を受けて東大のキャンパスへの立ち入りが禁止される中、駒場キャンパスに拠点をおく狂言研も、お稽古の当面休止を余儀なくされました。もちろん、今学期に予定していた狂言上演の機会や自演会も、感染拡大防止と活動休止による稽古不足を理由に、もれなく辞退・延期・中止ということになりました。

 

4月29日 北澤八幡神社昭和祭 奉納狂言〈痺〉→辞退

5月16日or17日 五月祭自演会「能狂言五月乃座」→五月祭そのものを延期

5月31日 六大学狂言研究会連絡協議会合同自演会「蟬の会」→秋に延期

6月13日 関東宝生流学生能楽連盟自演会 東大宝生会〈加茂〉→冬の会に延期

 

本番もないし、お稽古もできない、仲間にも、師範の先生にも会えません。私個人にとっては6月の〈加茂〉間狂言のお役は4年間の集大成的な位置付けだったし、仲間たちにとっても、難しい曲に挑戦する人、初シテで張り切っている人、秋冬から入会して初めて狂言をする人、初めて能舞台に上がる人、それぞれにそれぞれが大事な舞台でした。

 

まあ普通にサークル活動が大学生活の中で無視できない程度に大きな部分を占めている者の反応として、いてもたってもいられなくなり、せめて、と、zoomで小舞謡のお稽古しないか?とLINEグループで言ってみたら「良いと思います...!」と好反応を頂戴したので、やってます。zoom稽古。SPACの宮城聡さんがzoomで演劇の公開バーチャル稽古をしているのを見かけて、意外とできるのかと思ったのと、ここで諦めて完全に休止してしまわないことが大事だと思ったからです。

 

spac.or.jp

 

zoom稽古では今のところ、「狂言小舞」と呼ばれる、中世から近世にかけての民間歌謡をアレンジしたり、お能のパロディとして作られた短い謡と舞(普段は狂言の前段階の稽古としてこれを習得しつつ、お能の仕舞のように独立して舞台で演じることもあります)の、謡だけをどんどん覚えてレパートリーを増やしていく、ということでやっています。

 

私は今東京の下宿アパートから田舎の実家に帰っており、家の周りが畑なのでいくらでも大きな声を出して謡えるのですが、実家でも下宿でもあまり大きな声を出せない人もおり、限られた声量での稽古になり難しいこともあります。舞の稽古はある程度広い空間を確保できないと難しいですし、生で見合ってわかることが多く、「謡だけのオンライン稽古」というものの妥協策感はやはり否めません。ただ、オンラインでも時差がほぼないようなので、対面時のように扇を叩く音で拍を取ることができるのは便利ですね(参加してる皆、実はズレてるけど言えませんでしたとかだったらごめん)。

 

全国の能楽サークルの皆さん、オンライン稽古に関して画期的なアイデアがあれば是非共有させていただけませんか?

 

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また、京都学生狂言研究会KGKKのメタ婆ちゃんが最近話題のタグ #30DaySongCallenge で狂言の「曲」を毎日紹介しているのを見て、普段より余裕のあるこの機会に狂言というものへ思いを巡らせたり、狂言に対する自分の向き合い方を考えたり、勉強したり、稽古ができないというどうしようもないことを何か別の方法で埋めていく時間に上手くしていけたらいいな、と思ったりもしました。

 

ameblo.jp

 

 

現在の狂言研の活動はもっぱら狂言と小舞の「稽古」ですが、そもそも発足時は「研究」要素の色濃かった四狂連改め六狂連です。今、一時的にはzoom稽古だけやっていてもやり過ごせますが、長期化するとわかっているなら適応して形を変えていくべきなのでしょう、が、その見通しも曖昧です。ポストコロナ狂言研は、どうなっているのでしょうか。

 

とはいえ、一刻も早く、また思い切り稽古ができ、仲間と楽しく舞台に立てる日が来ることを願って止みません。「不要不急」のサークル活動ですけども、大学生活の一部として「必要」と感じてる人もいます、少なくともここに。どうしようもないことを嘆いているばかりでは、さらにそれで放棄してしまっては意味がないので、何かを、しなくては。

 

新入生の皆さんへ。新歓勧誘の洗礼を受けるのを実は楽しみにしていた方もそうでない方も。オンライン新歓企画は各所で行われていますし、うちも観世会、宝生会さんと計画はしていますが、zoomは「普段の活動」を体験できる場でもないし(限りなくオフラインと近い状態でできるサークルさんもあるとは思いますが)、私が今新入生の立場だったら正直掴みどころがないのではと思います。なので、是非とも狂言研に、ということは今は堂々と言えませんが、狂言研は、いつでも、コロナ禍のさなかでも、コロナ収束後でも、来年でも、どういうわけだかこんな妙なサークルのブログに辿り着いたあなたを待っています。

 

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(ナイル・東大4年)